アガスティア聖者はどんな人?アガスティア聖者の物語

アガスティアという聖者について私は実在する人物名だとは思ってもみませんでした。

しかし、実在した人物であり、神話もあるのですが、現実的な話もありますので紹介したいと思います。

【実話】医学への貢献

アガスティア聖者による医学への貢献は計り知れません。何千年も前に、多くの病気や医療上の疑問に対して明確な説明を残してきました。

サンスクリット語とタミル語の両方の達人であったため、アガスティアの名前で多くのアーユルヴェーダとタミル語の医学書が出版されています。ヴェーダの偉大な学者であったアガスティア聖者は、タミル語を学びタミル医学を確立し、多くの治療法を確立し、シッダ医学を創始し、シッダ医学の最初のシッダとして今でも崇拝されています。

シッダ医学について

シッダ医学はアガスティア聖者が仕組みを考えたと言われています。アガスティア聖者は、人間の数々の病を治すため、神から授けられたインスピレーションによって、この医学を始めたとも言われています。

シッダという言葉は、超自然的な力や神通力を有する者のほか、完成者や預言者、聖者(達人)を意味する言葉としても使用されます。

シッダ医学は、製薬において金属や鉱物の使用を重視することが特徴であり、錬金術とも言われているものです。

シッダにとって、神とは偶像ではなく体感すべきものであり、人間が自分自身の内側に神を見出せるようになれば、神を求めて寺院に出かける必要はないと書き残しています。
「人体は歩く神殿」(肉体をお寺、魂を神と見なし、人体を歩く神殿と)とみなされ、肉体も魂も重要視されていました。

心と体は相互に関連しているという考え方のため、一方の不均衡が他方に影響を及ぼすことがあります。これらはアーユルヴェーダとも共通する考え方であり、整えるために、瞑想、ヨーガ、マントラの詠唱などの実践を取り入れることがあります。

アガスティアの名で出版された本『சமரச நிலை ஞானம்』には、体内の重要な神経節についての説明があります。அகத்தியர் ஐந்து சாஸ்திரங்கள்(Agastya Pancha Shastras)という本では、18種類の精神疾患とそれに対応する薬が説明されています。

また、アガスティアの著書には次のようなものがあります。

【実話】タミル語を完成させた

医学とは別に、アガティア聖者はマントラ学、占星術、天文学、タミル語、サンスクリット語、錬金術に優れていました。

南インドのタミルナードゥ州や一部の国の公用語であるタミル語を完成させ、広めたのもアガスティア聖者と言われています。

タミル語の最初の文法書『அகத்தியம்(アガティヤム)』を書いたとされています。

現在は、世界で約7400万人の方々がこのタミル語を話しています。

さて、神話もいくつかご紹介します。

シヴァ神の結婚式

シヴァ神(ヒンドゥー教の最高神)とパールヴァティ女神(シヴァ神の妻)がカイラス山で結婚式を挙げました。八百万の神々が結婚式に招待され、北インドのカイラス山へ向かいました。

すると、世界の均衡が崩れ、北の土地が下がり、南の土地が上がってしまったのです。困ったシヴァ神はアガスティア聖者たった1人に南インドへ行き世界のバランスを取り、人々を守るように命じました。

アガスティア聖者は、「シヴァ神よ、多くの聖者たちが結婚式に参加するためにここに集まるのに、私はどんな罪を犯したのでしょうか?」と苦悩しながら尋ねました。

シヴァ神は「あなたが南の方向で世界のバランスを取っている場所から、私の結婚式に参加できるようにします」と言いました。

これに従い結婚式には参加せずに南インドに向かいました。この途中で様々な寺院でシヴァ神を祈ったとされ、寺院に物語が残っています。

そして、アガスティアはポーティゲイと言われる丘に定住することになりましたが、そこにある通称アガスティアの滝と言われる場所で、シヴァ神とパールヴァティ女神が結婚式の姿で現れて、その祝福を得ることが出来たと言われています。

上記は実際にアガスティアの滝の近くにある寺院の壁画です。

ラーマヤナ(西遊記の元になった物語)

『ラーマーヤナ』は、古代インドの叙事詩であり、神聖な英雄ラーマの冒険と困難を描いた物語です。インドのヴァールミーキという聖者によって編纂されたとされ、全7巻で構成されています。

ラーマヤナには「シータ」と呼ばれる女性が登場しますが、宮崎駿監督の天空の城ラピュタに出てくるシータはここから名前を取ったと言われています。また、西遊記やドラゴンボールのアニメの元になった物語とも言われています。

そんなこの物語にもアガスティア聖者は登場します。

ラーマ王子が邪悪な魔王ラーヴァナに連れ去られた妻シータを救出するための物語です。兄弟ラクシュマナと共に、途中で猿王ハヌマーンも味方に加わりながら魔王の元へ向かいます。

途中ラーマ王はアガスティア聖者の元を尋ね、彼の武器である弓矢を手にしたとも言われています。(違う聖者とも言われたりします)

物語の後半、戦いの準備を万全に整えている魔王ラーヴァナと対峙して、戦場で深い思索にふけり、戦いに疲れ果て不安を抱いているラーマ王を見て、戦いの様子を見に来たアガスティア聖者は、次のように話しかけました。

「おお、ラーマよ、力強い武装したご立派なラーマよ。わが子よ。あなたは戦場ですべての敵を征服し、敵に勝つための永遠の秘密をよく聞きなさい。非常に縁起が良く、非常に有益なアディティヤ・フリダヤム(太陽神の心:すべての本質の光を意味する)のマントラを唱えることによって、戦いで勝利するでしょう。太陽神に捧げられたこの聖なるマントラは、すべての敵を破壊し、あなたに勝利と永遠の幸福をもたらすでしょう。」そして、「ラーマがラーヴァナを倒す」と予言し、アガスティア聖者は帰っていきました。

ラーマ王はこのことを聞いて、大いに喜び、悲しみから解放されました。こうして彼の心配の雲は払拭され、アガスティア聖者の言葉に大いなる幸福をもって従いました。

ラーマ王は、身を清めた後に、熱心に太陽を見つめ、このマントラを3度唱え、興奮して弓を振り上げたのです。魔王ラーヴァナを殺すことを決意して全力を尽くしました。ラーヴァナの滅亡が近いことを知った太陽神アディティヤは、天上のすべての神々に囲まれ、喜びの心でラーマ王を見つめ、「急げ」「行け」と叫びました。

アガスティア聖者はラーマ王に、外敵だけでなく内敵も含めて、すべての敵を征服する永遠の秘訣を教えたのです。私たちの内なる敵は、妄想と無知が引き起こす欲、怒り、不安だと言われています。

私は、この物語を聞くと、ラーマ王に向けての言葉やマントラは、アガスティア聖者が私たちに残して下さったアガスティアの葉と類似しているように思います。

私たちも自分の中にある無知や妄想が生み出す未来に対する不安や心配などを、ラーマ王の様にそれらから解放されて輝かしい未来に向かった楽しみながら進んでいきたいですね✨✨

参考引用
Agathiyar History in Tamil – அகத்தியர் வரலாறு

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